アクセラレータプログラムをご存じだろうか。アクセラレータプログラムは企業などが新興企業に対して協業・出資をすることで両者の間で相乗効果を生み出そうというプログラムだ。
一口にアクセラレータといっても、主催者は多岐にわたる。大別すると、ベンチャーキャピタルや金融機関、一般企業、地方自治体の3つだ。彼ら主催者はオープンイノベーションの一環として、スタートアップに対し自社のリソースを提供し、大手企業の新規事業を協業・投資により創出する目的で開催している。そのため当然のことながら企業や自治体に資するスタートアップが選ばれ、成長を促すことになる。では実際にどのような企業がどのようなスタートアップを選び、どのように支援していったのかを見てみよう。
アクセラレータ―プログラムの例
ディズニーアクセラレーター
ディズニーはご存知の通り、アニメーションCGなどを手がけるエンターテイメント企業だ。そのエンターテイメント事業のサポートにつながる企業がアクセラレータ―プログラムでは2014年から毎年選出されている。例えば2014年にはスマートデバイスで操作するおもちゃを作るspheroという会社がプログラムに参加し、スターウォーズのBB-8ドロイドを制作したことで2015年に大ヒットとなった。両社がシナジー効果を生み出せた好例だろう。
Nike+ Accelerator program
ナイキはスニーカーやスポーツウェアなどスポーツ関連商品を手掛ける世界的企業だ。近年スポーツ業界にもITの力が利用されてきており、スタートアップと組むことでスポーツにおける新たなITの効果的な利用法を探ろうという狙いだ。このプログラムでは10社が選抜された。選抜された企業は3か月間にわたりポートランドで開催されるプログラムに参加でき、2万ドルの資金とナイキやテクノロジー産業のリーダーたちのメンタリングを受けられる。
スタートアップにとってのアクセラレータ―プログラムの魅力
スタートアップにとってのアクセラレータ―プログラムの魅力は3つある。まず1つは大企業からの出資を受けられるということだ。スタートアップには資金がないため成長するためにはまず資金を集めるというステップを踏む必要があるが、出資を受けられれば短期間で成長できる可能性が高まる。多くのアクセラレータ―プログラムは3か月ほどであり、その期間内だけでも出資を受けて大きな成長を遂げることができた例が実際に数多くある。2つ目としては大企業の優秀な社員、社内起業家らからメンタリングを受けられるということだ。起業を数多く見てきた、そして企業のことをよく知り、経営に関しても精通している社員の手を借りられるメリットの大きさは誰にでも想像できるはずだ。彼らはスタートアップの社員に交じって議論に参加してくれる。実際にアクセラレータープログラムに参加した企業はこのメンタリングが最も役に立ったと回答する場合が多いという。3つ目は大企業のアセットを自由に使用できるようになる場合があることだ。先ほど挙げたディズニーの例でも、spheroがディズニーの豊富な資産を生かすことができたからこそスターウォーズのロボットをヒットさせることができたのだ。アセットにはほかにも販売チャネル、コンテンツ、ブランド、キャラクター、技術、特許、人材、設備などがあり、アセットの少ないスタートアップにとっては大変魅力的だ。
数多くのアクセラレータ―プログラムを運営するcrewwとは
Wikipediaでアクセラレータ―プログラムを主催した企業一覧を見ると、運営企業にCrewwの文字が並んでいる。このcrewwとはいったい何なのか。
アクセラレータ―プログラムでは、スタートアップとの協業という建前ではあるものの、実際は大企業が主体となり、スター
トアップが下請けになってしまう場合が多い。そういった事態を避け、大企業とスタートアップがWin-Winの関係を作り出すサポートをするのがcrewwという会社だ。東京メトロや三菱商事などの数多くの大企業がcrewwを利用しており、これまでに393件の採用実績があるという。
大企業にはスタートアップが大企業の経営課題を解決するために大企業と組んでいるわけではないことを繰り返し伝え、そのことに了承した企業にのみアクセラレータの支援をするという。crewwがスタートアップの目線に立つことでスタートアップが安心して利用できる環境を作っているのだ。
アクセラレータ―プログラムによる地方活性化
ここまで企業によるアクセラレータ―プログラムの例を挙げてきたが、自治体が地域経済・地域産業活性化のためにアクセラレータ―プログラムを主催するケースもある。事例としては東京都や京都府・京都市、そして神戸市が挙げられる。「KYOTO OPEN ACCELERATOR(京都オープンアクセラレーター)は、多様な事業領域や顧客基盤、強固なブランドなどの経営資源(リソース)を有する京都に拠点を構える参加企業4社と、斬新なアイデアやノウハウを有する全国のスタートアップ企業との、オープンイノベーションによる新規事業創出を目的とするプログラム」で、「新産業創出を加速させる社会課題解決型のビジネス案」「独創的センサ技術でスマート社会の実現に貢献」「個人/法人向けを問わず『型にはまらない』新事業や協業」「“ちょっといいな”をもっとお届けするために」という4つの募集テーマを設け、現在参加企業のリソースが最大限生かせるような案を募っている。一方東京では、東京から世界を変える企業を輩出すべく、NPO法人エティックの運営によりスタートアップコンテストを行い、最優秀者100万円/優秀者50万円の賞金、ファイナリストには支援メニューを提供し、更に都内で法人設立時に活動資金100万円を提供するというプログラムを開催した。神戸市においても神戸市の持続的な経済成長のために500 Startups Kobe Acceleratorを開催し、起業家養成のためのメンタリングを行っている。
アクセラレータ―プログラムを利用すればスタートアップは数か月で約2年分のビジネスの成長が見込めるとされている。近年急速にアクセラレータ―プログラムを開催する企業が増えているため、どのスタートアップ企業でも合うプログラムがあるはずだ。プログラムを通して世界を変えられる企業が誕生することを願っている。